【雑記】”助かる”、”刺さる”という表現を考える

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ゆる言語学ラジオというコンテンツがある

私の好きなコンテンツのひとつに、『ゆる言語学ラジオ』がある。
ご存じでない方のために、Youtubeのリンクを貼っておく。

このチャンネルのメインとなる動画は、
メインスピーカーである”言語学ガチ勢”の水野さんと、
聞き手ながら豊富な知識を持っている”言語学素人”堀元さんの二人が、
言語学の範疇+αで扱われている諸問題に対して語る、というものだ。

毎回驚くような問題提起があり、分かりやすさユーモアがあり、
かつ日常を生きていて考えが及ばないような深い知見を得られるということで、
私を含めた一部の人間に「刺さっている」コンテンツだ。

不要不急のコンテンツは誰を救うか

2022年2月4日時点での最新の動画(雑談回)にて、
『助動詞「た」』の動画を生み出すにあたっての苦労や、
視聴者からの反応について紹介していた。
その中で、興味深い一言があった。

最近コメント見てると、『シークバーを見て1時間5分だった。助かる』って言っていて。
助かるってことはないだろ、何の危機に瀕してたんだあんたは!

堀元さんの発言、24分ごろ

この「助かる」の用法は半ばネットスラング化したものだが、
日常会話で用いられる「需要に対して供給が合致し、問題が解決する」用法(※1)を誇張・拡張して、
「”不足すると困る”状態を想像しづらいものが供給された場合」に、
あえて「助かった」と表現する(※2)面白さがある。

  1. 人手が足りなかったけど、きみが来てくれて助かるよ。
  2. チャオチャオを現実社会の縮図だと思ってる永田が大好きだから助かる

ちなみに2.の用法は、オモコロチャンネルの
「嘘つけ!見破れ!声枯らせ!疑心暗鬼ゲーム『チャオチャオ…!』」内にあったコメントである。

本当に生命の危機に瀕しているわけではないが、
あくまで喜びの表現の一つとして「助かる」という表現がハマり、
このように使われているのだろうと想像する。

水崎ツバメも同じことを言っていたなあ

ところで、話は急に変わるが、
『映像研には手を出すな!』という作品のなかに、
幼少期時代の興味から、「人やモノの動き」に異常なこだわりを見せる人物がいる。
正確には「それらの動きを、アニメーションで再現すること」に熱意を注いでいる。
それは、水崎ツバメというキャラクターだ。

作中ではこだわりが強すぎるがゆえにたびたび納期を圧迫してしまう彼女だが、
そんな彼女が見せるアニメーションに対する想いの一端が凝縮されたセリフがある。

チェーンソーの振動が見たくて、死にかかってる人がいるかもしれない。
私はチェーンソーの刃が跳ねる様子を見たいし、そのこだわりで生き延びる。
大半の人が細部を見なくても、私は私を救わなきゃいけない。
動きの一つ一つに感動する人に、私はここにいるって、言わなくちゃいけないんだ。

水崎ツバメ

自分が表現したいものを表現することと、他人に感動を与えることは別である。
だが、こだわりにこだわって自分のために生み出したものが、見知らぬ誰かを「助ける」こともある。
クリエイターが辿り着くべくして辿り着いた境地のようなものが、
奇しくも私の好きな二つのコンテンツにおいてそれぞれの形で見ることができたのが、ただ嬉しい。
助かる。

“刺さる”は最初に誰が発したのか

形を持たないこだわりが人を「助ける」一方で、似たような意味で「刺さる」という言葉がある。
ゆる言語学ラジオの動画内でも二人の会話に登場していたが、
この「刺さる」という表現はいつから、誰によって使われている言葉なのだろうか?

「心に刺さる」は新語? 知っておきたい言葉のいろいろ【コメントライナー】
「刺さる」は新しい言葉じゃなくてある世代に起こった言葉づかい?

上記リンクの1つ目は2021年5月のネット記事、2つ目はTogetterまとめだが、
前者の記事によると、2015年の新語として登場し、瞬く間に広まったとのことだ。

三省堂によると「刺さる」は2015年の新語だそうだが、瞬く間に市民権を得て、やがて「心に」を省略して単に「刺さる言葉」「刺さる映画」などと使われるようになっていった。

「心に刺さる」は新語? 知っておきたい言葉のいろいろ【コメントライナー】–時事ドットコム

Twitterで検索してみると、物理的な意味ではなく「心にショックを与える」という意味で、
「刺さる」という表現の初出は2007年の4月26日の下記ツイートだった。

これはネガティブな意味で使われている、いわゆる「グサッとくる」方面での用法だが、
その一か月後には、おそらくポジティブな意味で使われているツイートが見られた。

ただ、これはTwitterのサービスが生まれた時期が2007年だったというだけなので、
おそらくオフラインで「刺さる」と口にする人間はポツポツとはいたのだろうと思う。

意味合いとしては、最初にネガティブな意味での「刺さる」という表現があり、
そこから「心に直接働きかけるイメージ」があり、
今の使われ方へ変化していったのではないかと考える。

ちなみに、Twitterで時間をさかのぼりながら「刺さる」を調べていくと、
過去に行けば行くほど物理的に何かに刺さっている人の苦悶が見られて面白い。

オチはありません

この雑記は、ゆる言語学ラジオが僕にとって非常に”助かった”という体験と、
『映像研』のなかで一番好きなセリフがクロスオーバーした瞬間を、
なんとか文字として残しておけないか? という試みによって生まれたのものなので、
特にオチは用意していません。悪しからず。


クリエイターの皆さん。
貴方がぶっ刺すことでぶっ生き返る命があります。

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